2019年が始まった。今年は、すべてお前の勝ちでいい。お前は強い。お前が勝者、お前の優勝だ。お前のケツは誰よりも赤い。歴戦の証。すばらしい。けれど、僕の尻はそんなにも赤くはならないし、なりたくもない。そして、そんな局地戦に興味はない。一生お前は勝ち負けだけを考えておけばいい。僕は寂しくもない。僕にいま必要なのは、血でもなく、ぬくもりでもなく、ムード。そう、ムードさえあればいい。だから、このムードを壊さないでくれ。ムードは姿も形もないし、いとも簡単に壊れる。お前の局地戦に付き合って、ムードを壊させるようなことはしてはならない。ムードがなければ、人は争い始めるか、まぐわい始めるかしかない。甘いムード、それは別に恋だの愛だのためだけにあるのではない。素敵なムード。足りなくなったら、誰かのムードを取り入れて、そしてまた空洞の中はムードで満たされる。心地よくて、何かを作り出そうと思えるような、自由なムード。そういうものを大切にする、2019年にしたい。
私が選ぶ2018年のベスト・ニュー・アルバムです。 10.〈Room 25〉 No Name 9.〈Some Rap Songs〉 Earl Sweatshirt 8.〈Hive Mind〉 The Internet 7.〈Oxnard〉 Anderson Paak 6.〈Chris Dave and The Drumheadz〉 Chris Dave and The Drumheadz] 5.〈Care For Me〉 Saba 4.〈Semi Circle〉 The Go! Team 3.〈Stray Dogs〉七尾旅人 〈リトルメロディ〉・〈兵士A〉と、本人が言うところの「コンシャス」な作品が続いてきた中で、昨今の世界を見渡したときに、より「コンシャス」なアルバムをリリースするのだろうと考えていた僕は、いま誰よりもその新譜を心待ちにしていた、いや、より正確を期すならば、その新譜が世界に一番必要だと思うミュージシャンが七尾旅人であった。だから、リリースにまつわる彼の一挙手一投足は見逃すことのないようチェックし続けて、ライブも見れるだけ見てきた。そしてようやくアナウンスがあり、程なくして実際にリリースされたアルバムを聞き始めるととても驚いた。〈リトルメロディ〉のようなアコースティックな響きも、〈兵士A〉のような息を呑むような緊張感もここにはない。ただひたすらに、この世界から「はぐれてしまった」人々の、困惑や後悔、あるいは愛着を歌い続ける、ある意味非常にパーソナルな音が鳴らされ続けていた。さて、ここで歌われる「はぐれてしまった」とは、どういうことなのか。本来の場所からいなくなってしまった人。いられなくなった人。あるいは、そうして人々(あるいは犬、場所、時間…etc)が去って行き、取り残されてしまった人々。七尾旅人はそういった人々の心情に可能な限り寄り添いながら歌を紡ぐ。若手の邦楽ロックバンドの歌詞にも「わかった風な」メタ的な歌詞が増えてきたが、七尾旅人のアプローチはその真逆であり、個々の境遇に出来るだけ奥深く寄り添い、最も普遍的な感情を引き出す歌を描こうと試みている。そのスタンス自体は、彼のいう「コンシャス」であるところの「兵士A」等でも無論一貫しているのだが、